「講座:数学の発見」(過去データ一覧)

第16回

2014年10月18日(土)「石取りゲームの数学」佐藤文広(立教大学理学部教授)

三山くずしのような石取りゲームには、数学的な必勝法があります。この必勝法の数学的な根拠は、ゲームを2つ並べて対戦するゲームの「和」を考え、ゲームの和という演算がもつ代数構造を調べることにあります。このような、石取りゲームと代数構造との間のちょっと不思議な美しい関係をご紹介します。ゲームは、いろいろルールを変形して調べていくと、すぐに深い世界に入り込んだり、思わず見通しの良い世界に出てしまったり、多くの予備知識もいらずに数学の研究の雰囲気を感じることのできる楽しい題材です。ご一緒に楽しみたいと思います。
参考文献:『石取りゲームの数学----ゲームと代数の不思議な関係』(数学書房)

第15回

2014年4月26日(土)「無限大,無限小と超実数」河東泰之(東京大学大学院数理科学研究科教授)

1=0.999... で本当によいのか,1/∞=0で分母をはらったら∞x0=1なのか,∞/∞はいくつか,といったことを気にした人は少なくないと思います. こういった極限操作について厳密な手法を与えるのがε-δ論法ですが,それとは別に無限大や無限小を直接に扱う理論がロビンソンの超準解析です. これについての入門的解説を行います.

第14回

2013年8月31日(土)「オイラーの数学」野海正俊(神戸大学理学部教授)

オイラーの数学は驚くほど「現代的」である.この講義では「無限解析序説」から幾つかの話題を取上げ,オイラーの数学の豊かさと奥深さをお伝えしたい,時代を超えて,オイラーの瑞々しい感性を感じ取ってほしい. 参考書:『オイラーに学ぶ----『無限解析序説』への誘い』(野海正俊著,日本評論社)

第13回

2013年5月3日(金/祭日)「方程式の有理数解を探す」栗原将人(慶應義塾大学理工学部教授)

方程式の整数解および有理数解を探す問題は、Fermat予想を持ち出すまでもなく、古代から研究されてきた問題であり、現代数学でもさまざまな方面からさまざまな発展があります。 この講義では、岩澤理論を用いて、曲線とくに楕円曲線の有理数解についての情報を得たり、解を求めたりすることについて語りたいと思います。 この方面の新しいトピックについて話したいと思います。 岩澤理論ですから、素数pを固定して、p進世界で考えます。 実例もたくさん出す予定です。p進世界がいかに魅力的な世界なのかを語れたらいいなと思っています。

第12回

2012年10月8日(月/祭日)「数学を研究するとはどういうことをするのか」深谷賢治 (京都大学理学研究科教授)

数学をやっていますというと、まだ何か研究することがあるのですか、と言われることがあります。 数学は古い学問で、1000年以上も続いていますが、もちろん研究することは山ほど残っていて、まだまだ分からないことだらけです。 私は幾何学が専門ですが、それを例にとって、どんなことが研究されているのか、数学者はどうやってそれを研究しているのか、研究結果をどうやっていろいろな人と知らせ合い、研究を進めていくのか、などを、お話ししてみたいと思います。

第11回

2012年5月5日(土)「クラスター代数とルート系」中島 啓 (京都大学数理解析研究所教授)

哲学者プラトンは、正多面体が5種類しかないことを宇宙の基本原理としたそうです。現代数学において、この正多面体がディンキン(もしくはコクセター)図式として現れることが、数多く観察されています。そして、この観察を通じて、一見すると関係がないと思われる二つの対象の間に深い関係があることが判明したりして、新しい数学が作られています。そのような例として、フォーミンとゼレビンスキーが、2002年に導入したクラスター代数について、フリーズと呼ばれる数遊び (小学生にも理解できる!) から始めて、紹介したいと思います。

第10回

2011年12月23日(金)「素数はどれだけたくさんあるか?」小山信也(東洋大学理工学部教授)

素数が無数に存在することはユークリッドの定理として有名ですが、無限の中にも大きな無限と小さな無限があり、素数の無限がどれくらいの大きさなのかという問題は数学最大の未解決問題とされています。本講座ではユークリッドの定理を初めて改良したオイラーの方法を解説し、ゼータの明示公式を経てリーマン予想との関連を話します。

第8回

2010年5月1日(土)「トポロジー入門」橋本義武(東京都市大学知識工学部自然科学科)

わたしたちは,遠い/近い,広い/狭い,のような空間的性質に関する形容詞を,しばしば目に見えない事柄に対して転用する.これは,空間化することでその事柄をより明瞭かつ生き生きととらえようとしているのであろう.このような空間化の方向を大胆かつ徹底的に推し進めたのがトポロジーである.トポロジーは数学のあらゆる部門に浸透し,いたるところで大きな思想的転回を促した.(参考:遠山啓「無限と連続」岩波新書,第三章 つくられた空間)トポロジーの基本事項である,管状近傍,写像度,オイラー数,絡み数について解説し,一つの応用として,電磁気がトポロジーの観点からどのように理解されるか,というお話をします.

2010年7月31日(土)「アクセサリー・パラメーターの問題−微分方程式の大域解析」原岡喜重(熊本大学大学院自然科学研究所)

物理学や数学の諸分野で,超幾何関数やベッセル関数といった,微分方程式で定義される特殊関数が重要な働きをします.そこで微分方程式の解の大域挙動を調べることが必要になり,アクセサリー・パラメーターはその大域挙動を深いところで支配するパラメーターとして現れます.その支配の仕組みはまだ解明されておらず,とてもおもしろい研究テーマです.微分方程式とは何か,といった始まりのところから,アクセサリー・パラメーター問題のおもしろさまでをお話ししたいと思います.

2010年12月23日(木)「歴史社会学からみた19-20世紀数学の思想」林 晋(京都大学大学院文学研究科)

所謂20世紀「現代数学」を、社会学、美術史、思想史などでいう「近代性」の視点から捉え直す、数学史の新思潮が生まれつつあります。この新思潮を、不完全性定理で著名なゲーデルの歴史観と、社会学の近代化論を視座として紹介します。具体的には、解析学の算術化から、デーデキントたちの抽象数学、ヒルベルト・ブルバキの公理主義・構造主義などの思想の歴史学的意味を、美術・建築・産業史における近代主義・近代化論の視点から分析します。

第7回

2009年10月31日(土)「双曲幾何学とクライン群」阿原一志(明治大学理工学部教授)

クライン群はフェリックス・クラインによって提唱された群で、関数論・低次元トポロジーなどの面からいまなお盛んに研究されています。この講座では、クライン群を取り巻く環境、とくに双曲幾何学からのアプローチを紹介したいとおもいます。双曲幾何学についての知識を仮定せずにお話しますので、興味のある方ならどなたでも参加できます。

2009年12月19日(土)「代数幾何学の流れ」上野健爾(京都大学名誉教授)

座標幾何学に源を発する代数幾何学は、19世紀に射影幾何学や代数函数論の発展を取り入れて本格的な発展を始めた。そこでは様々な数学的手法が複雑に絡み合いながら興味深い数学を作り上げている。本講座ではこうした代数幾何学の流れをたどりながら、その中で日本人数学者がどのようにかかわってきたかを併せてお話したい。

第6回

2009年4月25日(土)「私がこの人生で見た整数論の発展」加藤和也(京都大学大学院理学研究科教授)

整数論を30年以上研究しておりますが、その間に、整数論にさまざまの大きな出来事がありました。フェルマーの最終定理が証明されたこと、モーデル予想や、岩澤主予想や、佐藤−テイト予想(の大きな部分)が証明されたこと、などが特に心に残ります。そういう大きな出来事を中心に、自分自身の研究を交えながら、ふりかえってみたいと思います。

2009年7月19日(日)「空間のかたち -- 幾何化定理に向けて」河野 俊丈(東京大学大学院数理科学研究科教授)

いわゆる空間の幾何化の問題は、紀元前のギリシャにおけるユークリッド幾何学にはじまる、人間の空間認識に対する長い歴史と関わっています。この講座では、非ユークリッド幾何学、4次元空間の多面体などを取り上げながら、局所的に合同な幾何構造をもった空間が、大域的にどのような広がりをもつかをお話しします。

2009年8月29日(土)「解析概論の系譜」高瀬 正仁(九州大学大学院数理学研究院准教授)

微分積分学はライプニッツとニュートンの発見に始まり、オイラーの無限解析、ラグランジュの解析関数論、コーシーの代数解析と複雑な経路をたどって成立しました。各時代を代表する解析概論のテキストを鳥瞰し、今日の教育現場の諸問題を考察し、求められている理想のテキストの姿を描きたく思います。

第5回

2008年8月24日(日)「奇跡的な構造物とその対称性」宮本雅彦(筑波大学)

偶然の一致が生み出したとしか言いようのない不思議な性質を持つモンスター単純群の神秘さの源流をたどる。まず、正12面体の数学的な魅力を群の立場から解説し、次に、正12面体を使って、奇跡的な数学構造物であるゴーレイコード、さらにリーチ格子を構成し、それらの対称性全体のなす群の性質について解説する。

2008年11月1日(土)「日本発位相幾何学的グラフ理論入門」根上生也(横浜国立大学)

点と線で構成されたグラフという素朴な図形を曲面や空間に配置することで驚くような性質や現象が浮かび上がってきます。それを解き明かすのが位相幾何学的グラフ理論です。この講座では,日本の研究グループの活動を中心に,離散数学とトポロジーが融合した研究成果について紹介していきます。

2008年12月20日(土)「双対性のさまざまな側面」志賀弘典(千葉大学)

双対性 (duality) は現代数学の諸分野を縦断して貫いているkey word である。 今回の連続講義では、
 1) 双対性の最も素朴な姿であるベクトル空間および射影幾何学における双対性 から出発して、
 2) 解析学と幾何学の双対性である homology と cohomology の概念を通じて、 Riemann 面における双対的現象が見いだされ、
 3) さらに、近年構築された“ねじれコホモロジー理論”によって、超幾何微分 方程式の世界にこの双対的現象が移植されること。
この双対理論がガンマ函数の反転公式も支配していることを述べる。

第4回

2008年2月3日(日)「素数からゼータへ」黒川信重(東京工業大学理学部数学科)

各コマのタイトルを、1.素数、2.オイラー、3.ゼータとする。素数は2500年程昔のギリシャにおいて発見され、現代数学に至るまで数学発展の原動力を与え続けています。素数の深い研究はゼータを通して数学最大の難問リーマン予想やフェルマー予想等の重大な問題に関連してきます。素数は現代暗号の鍵にもなっています。この講義では素数の簡明な話から説き起こして、昨年生誕300周年を迎えたオイラーが発見したゼータに至ります。

2008年4月5日(土)「統計における確率モデル」吉村 功(東京理科大学工学部)

各コマのタイトルを:1.確率モデルを用いたデータ縮約、2.ガウスの誤差モデル、3.モデル選択のAICとする。統計学の要点は,データに含まれる情報を,分かりやすくかつ使いやすい形で,取り出すことである.それには,確率変数という概念を用いた数学的定式化を利用するのが有効である.現実例を用いた説明,ガウスの問題提起,現代のモデル同定の道具,という3題話で説明を試みる.

2008年5月31日(土)「ソリトンの数学」武部尚志(お茶の水女子大学理学部数学科)

『ソリトン』と言うのはある種の波の事です。19世紀に造船技術者によって『発見』され、1950年代になって計算機実験によってその不思議な性質が見つかりました。この講義ではその辺りの歴史を簡単に紹介した後、1980年代に解明されたその不思議な性質の背後にある数学についてお話したいと思います。

第3回

2007年8月26日(日)「確率論とその周辺の話題から」楠岡成雄(東京大学大学院数理科学研究科)

確率論とその応用、乱数、準乱数に関する話題をいくつか取り上げ解説していきます。現在考えているトピックスはじゃんけん、乱数暗号、モンテカルロ法、マルコフ連鎖とその具体例、最後はお話として確率微分方程式についてもふれたいと考えています。

2007年10月20日(土)「超弦理論と宇宙の謎」江口 徹(京都大学基礎物理学研究所、東京大学理学系研究科)講師

素粒子の超弦理論はここ10数年間ほどの間に大きな発展があり、重力を含めた素粒子の統一理論として非常に有望視されています。超弦理論はミラー対称性など現代数学の新しい分野にも大きな刺激を与えてきました。この講座では、弦理論の基礎から初めて、弦双対性、D-ブレーン、M理論などの最近の発展を紹介します。また、超弦理論を用いたブラックホールの分析や、超弦理論に基づく宇宙創成のモデルになどついても触れたいと思います。

2007年12月8日(土)「4次元のトポロジー」松本幸夫(学習院大学理学部数学科)

多様体と呼ばれる空間の形を、数学の目を通して調べるのが「多様体のトポロジー」です。この講義では、とくに4次元多様体をとりあげ、他の次元と較べたときの4次元の特殊性や、4次元の「見方」などについてお話します。

第2回

2007年1月27日(土)「実用整数論の世界----符号・暗号の数理」桂 利行(東京大学大学院数理科学研究科)

整数論は長い歴史を持つ数学の美しい分野ですが、最近では、実社会でも活用されています。この講演では、初等整数論の基礎的な概念の解説から始めて、整数論が、デジタルの誤り訂正に用いられる符号理論や、セキュリティー保持のための暗号理論にどのように応用されるかについて解説します。

2007年3月31日(土)「非ユークリッド幾何と整数論」砂田利一(明治大学理工学部数理科学研究所)

その人の名誉のため名前は書かないが、フェルマー予想の証明は非ユークリッド幾何学を使っているから、通常とは異なる論理で行われていると誤解した人がいる。本講演では、その誤解を解くために、幾何学と整数論の密接な関係について解説することを目的とする。

2007年4月29日(日)「ポアンカレ予想入門」村上 斉(東京工業大学大学院理工学研究科)

近年解決が伝えられているポアンカレ予想について解説します。この予想は3次元多様体という、局所的に3次元ユークリッド空間と同じような図形に関するものです。この講座では、3次元多様体の定義から始めて、基本群、ホモロジー群などを説明し、ポアンカレ予想が何であるかがわかるようにします。

第1回

2006年9月2日(土)「図形とガロア理論」加藤文元(京都大学大学院理学研究科助教授)

「対称性」を記述するのが「群」ですが、「いくつかの対称性の間の変化の様子」を統制するのがガロア理論です。例えば「図形の対称性」においてはそれが目に見えますが、代数方程式のガロア理論もこのような切口で捉えることが出来る、ということを解説しようと思います。

2006年9月3日(日)「整数の分割」佐藤文広(立教大学理学部数学科教授)

3を正整数の和に分割すると、3=3,2+1,1+1+1の3通りあります。そういう素朴な話から始まり、未解決問題の世界までご案内します。道具は、Σ記号など最小限しか使いません。オイラー、ルジャンドル、ラマヌジャンなどがたどった世界を体験してみませんか。 テキスト:数学書房より5月に刊行された同名の翻訳書『整数の分割』(佐藤文広訳)をテキストとして使用しますので、お持ち下さい。この機会に購入希望の方には特価2,200円(定価の25%割引)かつ送料無料にてお届けしますので、併せてお申し付け下さい。