微分方程式 増補版

原岡喜重 著
A5判・並製・160頁・定価2000円+税

増補版では,演習書あるいは自習書としても役立つよう,演習問題を大幅に増やし,またそれらの解答も,単に答を挙げるのではなく,その答の導出過程についてできる限り詳しく記述した. 多くの具体的な微分方程式を解くことで,内容の理解が進み,計算技術の向上が図れる, ことをめざした.

まえがき

 微分方程式は,数学・物理学をはじめ自然科学における基本的な表現形式 である.微分は変化を記述する手段であったので,様相の変化を調べる自然 科学において微分方程式が現れるのはごく自然なことである.
 本書は,大学初年級の微分積分・線形代数を学んだ読者が,微分方程式に ついての基礎的な事柄とその理論全体のイメージを身につけるためのガイド ブックとなることを目指して書かれた.まず,微分方程式の基礎的事項として 重要と思われる内容はすべて載せることとした.ただしそれぞれの内容につ いてはなるべくエッセンスを伝えるように工夫し,分量が多くなることを避 けて,理論の全貌が把握しやすいような記述を心掛けている.同時に,かな り特殊な事項でも,それが本質的で重要と思われる場合には取り上げた.そ の際には単に結果を述べるのではなく,その発想・アイデアを明らかにする ことで,一般の場合を考える手がかりを与えたつもりである.さらに実用性 を重視し,微分方程式の解き方や,解が具体的に求まらない場合の解の性質 の調べ方について,明確なイメージが獲得できるよう内容を精選した.

 本書の特徴を,このような方針と対応させながらいくつか挙げよう.
 理論的に筋道の通った説明をするためには基礎理論である第4章の内容か ら始めるべきであろうが,まず微分方程式というものに慣れてもらうため, 求積法と線形微分方程式の理論を前に持ってきた.
 微分方程式の解を求めるテクニックは膨大にある.本書では,第2章の求 積法,第3章の線形微分方程式および第5章の級数による解法のところで, それぞれのテクニックについて網羅的になることを避けながら本質的な部分 を解説した.とくに級数による解法は,ふつうは複素領域における微分方程 式の理論の中で触れられる内容だが,解法のテクニックとしても非常に有用 なので盛り込むこととした.また第4章で扱う諸定理,とくに比較定理は, 解の性質を調べる手段としても重要である.どの場面でどのテクニックを適 用すればよいかという判断力も身につけることで,応用上十分な力がつくで あろう.
 少し特殊な内容として,ロンスキアンを用いた微分方程式の作り方,ベッセ ルの微分方程式の確定特異点における特性指数に整数差がある場合の解の構成 法を取り上げた.これらは類書ではあまり触れられていないように思われる が,いずれも重要な事項であり,身につける価値があると考えたためである.
 最後の第6章では,それまで学んできたことの集大成として,太鼓の音の 解析を行った.身近な現象が,微分方程式の理論により明快に説明されると いうことを体験していただきたい.

 本書を通して,微分方程式の威力と魅力を感じていただければ幸いである.

  2006年2月
                           原岡喜重

増補版にあたって

 この増補版では,演習書あるいは自習書としても役立つよう,第2章求積 法,第3章線形微分方程式の演習問題を大幅に増やし,またそれらの解答に おいても,単に答を挙げるのではなく,その答の導出過程についてできる限 り詳しく記述した.多くの具体的な微分方程式を解くことで,内容の理解が 進み,計算技術の向上が図れることと思う.

  2016年9月14日
                           原岡喜重

目次

まえがき

凡例

第1章 微分方程式とは

第2章 求積法
 2.1 Easiest Case
 2.2 変数分離形
 2.3 同次形
 2.4 リッカチ型

第3章 線形微分方程式
 3.1 解空間の構造
 3.2 定数係数線形同次微分方程式の解法
 3.3 非同次の線形微分方程式の解法
 3.4 連立微分方程式(システム)

第4章 微分方程式の基礎理論
 4.1 解の存在と一意性
 4.2 解の延長(接続)
 4.3 初期値に関する依存性
 4.4 比較定理

第5章 級数による微分方程式の解法
 5.1 ベキ級数で表される解
 5.2 正則点における級数解
 5.3 確定特異点における級数解
 5.4 特殊関数

第6章 応用―太鼓の音
 6.1 物理的準備
 6.2 極座標への変換
 6.3 変数分離法
 6.4 解の構成
 6.5 太鼓の音

問の解答

章末問題の解答

参考文献

索引