明解 微分積分

南就将, 笠原勇二, 若林誠一郎, 平良和昭 著
A5判・並製・336頁・2700円+税

高校数学と大学における微分積分の橋渡しをすることを主眼とした。 微分積分学の底に流れる考え方を重視し、大局的にしっかりとその筋道が見えるように構成。新しい概念や定理には具体例を、また標準的な計算については計算例を示して読者の理解の助けとなるよう努めた。

目次
記号表

第 1 章連 続関数

1.1 実数.................................. 1
1.2 集合.................................. 4
1.3 実数の連続性の公理.......................... 6
1.4 関数の極限値............................. 14
1.5 連続関数................................ 23
1.6 初等関数................................ 26


第 2 章 微分法

2.1 微分係数と導関数........................... 33
2.2 初等関数の微分............................ 46
2.3 平均値の定理............................. 52
2.4 テーラーの定理............................ 64


第 3 章 積分法

3.1 定積分と不定積分........................... 77
3.2 基本的な不定積分........................... 87
3.3 置換積分と部分積分.......................... 89
3.4 積分の計算(1) 有理関数....................... 96
3.5 積分の計算(2) 三角関数....................... 99
3.6 積分の計算(3) 無理関数....................... 102
3.7 リーマン積分可能性.......................... 103
3.8 広義積分................................ 108
3.9 応用:曲線の長さ........................... 117


第 4 章 多変数関数の微分法

4.1 R_n の点集合と多変数関数...................... 123
4.2 偏微分と全微分............................ 131
4.3 テーラーの定理............................ 144
4.4 陰関数定理.............................. 151


第 5 章 重積分

5.1 重積分の定義(その1) ........................ 165
5.2 重積分の基本的な性質(その1) ................... 172
5.3 可測集合................................ 173
5.4 重積分の定義(その2) ........................ 178
5.5 重積分の基本的な性質(その2) ................... 182
5.6 重積分と累次積分........................... 184
5.7 重積分と体積............................. 196
5.8 重積分の変数変換の公式....................... 197
5.9 変数変換の公式の例.......................... 203
5.10 広義積分................................ 206
5.11 曲面.................................. 214
5.12 曲面積................................. 218
5.13 線積分................................. 224


第 6 章 無限級数

6.1 定数項級数.............................. 230
6.2 一様収束と関数項級数......................... 241
6.3 ベキ級数................................ 246
6.4 テーラー級数............................. 253


第 7 章 実数の連続性再論

7.1 数列と関数の極限値.......................... 260
7.2 連続性公理.............................. 269
7.3 補記.................................. 273


第 8 章 連続関数の基本性質 277


第 9 章 リーマン積分

9.1 区間の分割とリーマン積分...................... 282
9.2 定積分の性質............................. 288
9.3 微積分学の基本定理.......................... 296
9.4 ダルブーの定理.リーマン和の極限としての定積分......... 298


付録命題と論理記号
問題解答
数学者一覧
ギリシャ文字
索引

まえがき

本書は,当初,筑波大学の数学類,物理学類,化学類,地球学類等の初年級の学生を対象とした微分積分学の教科書・学習書として書かれたものである.しかしながら,本書の主眼は,幅広く理学,工学,医学等を学ぶ学生を対象にして,高校数学と大学における微分積分学との橋渡しをすることである.高校時代に身につけた微分積分の知識を出発点にして,大学での微分積分学の基本的な概念を理解すること及び将来の応用を支える確かな思考力を養うことは,微分積分学を学ぶ上で,最も重要であると著者たちは考えている.そのために,新しい概念や定理には,読者の理解を助けるために具体例を与えている.また,標準的な計算については計算例を示している.

本書の内容は,微分積分学の底に流れる考え方を重視し,大局的にしっかりとその筋道が見えるように配列されている.連続関数については,第 1 章(連続関数)で 1 変数関数を扱うが,基本的な性質の証明は,第 7 章(実数の連続性再論)の準備の下,第 8 章(連続関数の基本性質)で与えられている.2 変数の連続関数は第 4 章で扱う.微分については,第 2 章(微分法)で 1 変数の場合を扱い,第 4 章(多変数関数の微分法)で 2 変数の場合を扱う.積分については,第 3 章(積分法)で 1 変数の場合を扱うが,理論的側面は第 9 章(リーマン積分)で述べられている.第 5 章(重積分)で 2 変数の場合を扱うが,重積分では「図形の面積とは何か」という基本的な問題を理論の出発点にしている.無限級数の基本的な事項は,第 6 章(無限級数)で解説されている.

勉強することが楽しくなるには,学生個人の努力が不可欠である.特に,微分積分学を理解するには計算力をつけておくことが大切である.そこで,各章毎に,理解を確認するための「問」,章末には,学習内容の深化を目的とする「章末問題」を課した.これらの解答およびヒントが巻末に収録されているので,積極的に利用してほしい.

本書の分担は,第 1 章,第 2 章,第 7 章,第 8 章,第 9 章(南就将),第 3 章(笠原勇二),第 4 章,第 6 章(若林誠一郎),第 5 章(平良和昭)である.数理物質科学研究科数学専攻の同僚諸氏には,『明解微分積分』「限定版」(2008年3月)及び「限定第2版」(2009 年3月)を,実際の講義および演習において使用して頂いた.その様々な指摘及び工夫が本書の随所において生かされていることを記して,ここに感謝の意を表します.

2009年8月

著者一同