素粒子論のランドスケープ2

大栗博司 著
四六判・上製・352頁・定価2900円+税

『素粒子論のランドスケープ』(2012)の続編。 その後、ヒッグス粒子が発見され、重力波が 直接観測されて宇宙に新しい窓が開いた。 その間の雑誌への寄稿や対談・座談会から厳選。 素粒子物理学はどこへ向かうのかを探る。

まえがき

 数学書房から,私の解説記事をまとめた『素粒子論のランドスケー プ』を出版していただいてから今年で5年になります。
 この5年の間には,50年前に予言されたヒッグス粒子が発見され 素粒子の標準模型が完成し,また100年前に予言された重力波が直接 観測されて宇宙に新しい窓が開くなど,素粒子物理学や宇宙物理学で は大きな進歩がありました。私の研究する超弦理論の研究でも,量子 情報理論との深い関係が明らかになりつつあり,重力の謎の解明に新 しい角度からの挑戦が始まっています。
 こうした科学の発展を,広く一般の方々にお伝えするために,過去 5年の間に,自然界の基本法則に関する3部作『重力とは何か』,『強 い力と弱い力』,『大栗先生の超弦理論入門』,数学に関する『数学の 言葉で世界を見たら』,仏教学者との対話『真理の探究』を上梓しま した。日本科学未来館が制作し,私が監修としてお手伝いした3D科 学映像作品『9次元からきた男』も,国際プラネタリウム協会の2016 年最優秀教育作品賞に選ばれるなど,高い評価をいただいています。
 このような科学アウトリーチの一環として,雑誌への寄稿や対談・ 座談会の企画をお引き受けしてきたところ,数学書房の横山伸さんか ら,これらの記事をまとめて出版しようというご提案を受けました。 横山さんには,前回の『素粒子論のランドスケープ』でもお世話に なったので,続編になります。読者の便宜のために,前回のように, 星の数で記事の難易度を表すことにしました。前回は3段階でした が,今回はより幅広い媒体に書いた一般向けの記事が多いので,2段 階にしました。正確な定義はありませんが,☆は高校生でも気軽に読 める記事,☆☆は理系に興味のある学生や社会人を想定したもので す。星を割り振ってみると,☆のついた記事が20本,☆☆が5本で, 大部分は気楽に読んでいただけると思います。異なる難易度の記事が 混ぜてありますので,ちょっと難しいと思う記事にも挑戦してみてく ださい。
 各々の記事のはじめには,記事を書いた経緯などの解説をつけまし た。また,本書の末尾には専門用語の解説を書きましたので,ご参考 になさってください。
 前回の『素粒子論のランドスケープ』に続き,本書のご提案をいた だき,丁寧に編集をしてくださった横山伸さんに感謝します。記事の 執筆の際に有益なコメントをいただいた皆さん,ここに全員の名前を あげることはできませんが,ありがとうございます。本書への記事の 転載を許可してくださった出版社の皆さんにもお礼を申し上げます。
 物理学は,自然界の現象の背後にある基本法則を見極め,それを 使ってさらに広い範囲の現象を理解することも目的とする学問です。 米国でロケットの開発と打ち上げを業務とする民間会社を経営してい るイーロン・マスクはインタビューの中で,大学で物理学を専攻して 学んだ「基本原理に立ち返って考える」方法がビジネスでも役に立っ たと語っていました。東野圭吾の推理小説『ガリレオ』シリーズで物 理学者湯川学が難問を解決できるのも,基本原理に立ち返るからで しょう。本書の記事を読んで,基礎原理から考える大切さと楽しさを 感じ取っていただけると幸いです。

 2017年11月

                                   大栗博司

目次

第吃堯―杜呂板狂考論を語る
 超弦理論が予言する驚異の宇宙 ☆
 ブラックホールに落ちるとどうなるか? ☆
 重力とは何か ☆
 大江健三郎、三浦雅士、原広司との座談会:空間像の変革に向けて ☆
 一般相対論と量子力学の統合に向けて ☆☆
 重力理論と量子もつれ ☆☆
 誤り訂正符号とAdS/CFTの関係 ☆☆
 エドワード・ウィッテン京都賞受賞記念座談会:超弦理論の20年を振り返る ☆☆

第局堯―杜惑箸隆兮
 アインシュタインの予言が実証されるか ☆
 重力波の直接観測で宇宙の新しい窓が開いた ☆
 重力波の直接観測3つの意義 ☆
 三浦雅士との対談:世界の見方を変える ☆

第敬堯.劵奪哀肯鎧劼搬仂寮の自発的破れ
 ヒッグス粒子とみられる新粒子ついに「発見」 ☆
 ヒッグス粒子と対称性の自発的破れ ☆
 追悼 南部陽一郎博士 ☆
 ヒッグス粒子発見の次に来るもの ☆

第孤堯/学との関係
 場の量子論  ☆☆
 役に立たない研究の効能 ☆
 杉山明日香との対談:科学を知れば、もっと豊かになれる ☆

第紘堯仝Φ羹蠅留娠帖異分野との交流
 アスペン物理学センター ☆
 ピーター・ゴダード、村山斉との鼎談:研究所の役割、数学と物理学の関係 ☆
 落合陽一、四方幸子との鼎談:アートとサイエンスの可能性 ☆

第塞堯…日新聞WEBRONZA
 ついに太陽系脱出 ボイジャー36年の強運 ☆
 内側から見た米国の大学入試制度 ☆
 「現在の基準で過去を裁く」ことの是非 ☆

用語解説