シリーズ「問題・予想・原理の数学」

シリーズ刊行にあたって

 昨今,大学教養課程以上程度の専門的な数学をもわかりやすく解説する〈入門 書〉が多く出版されるようになり,内容的にも充実してきたと思う.そのような 中にあって,理論の概略や枠組みを提示するだけでなく,そもそもの動機は何で あったのか,あるいはその理論の研究を推進している原動力は何なのか,といっ た観点から書かれた本のシリーズを作りたい.
 パッケージ化され製品化された無重力状態の理論を展開するだけでなく,そ こに主体的に関わる研究者達の目線から,理論の魅力が情熱的に語られるような もの.「小説を読むように」とまでは期待できないにしても,単なる〈入門書〉 や〈教科書〉ではなく,その分野の中でどのような問題・予想が基本的なものと して取り組まれ,さらにはそれに取り組んできた,あるいは現在でも取り組んで いる研究者たちの仕事・アイデア・気持ち・そして息遣いまでもが伝わるよう な「物語性」を込めた内容を目指したい.
 このような思いからシリーズ『問題・予想・原理の数学』の刊行を計画し,気 鋭の研究者たちに執筆を依頼した.このシリーズを通して,数学の深層にも血 の通った領域をいくつも見出し,さらなる魅力的な高みを感じ取られんことを 願う.

 2015年11月
                                 編者