理系数学サマリー


まえがき

本書は,高校1年〜大学2年あたりで学習する数学の中で実用上有用な 内容を要約して説明したものである.特に,最近また数学を必要としてい るが,高校・大学で勉強した数学はかなり忘れてしまったという方を想定 して書いた.そういうわけで,公式や定理は証明を割愛した. 昔,高校・大学で,数式や微積分の計算,方程式を解く練習をたくさんし た方も多いかもしれない.しかし,こういう部分は計算機にまかせたほう がよい.計算の技術や技巧を思い出して,間違いなく正確に計算をするこ とは相当困難なことであり,それをもう一度頑張って勉強するよりは,少 しお金を払ってMathematica などの数式処理ソフトを購入し,その使い方 をマスターするほうが,ずっと少ない努力で正確な計算ができる.こうい う数式処理ソフトは,単純な数値計算だけでなく,文字式の計算,因数分 解,(連立) 高次方程式を解くこと,与えられた関数の微積分(数値解だけ でなく関数の形でも答が得られる) などは大得意である.しかし,こうい うソフトを使って計算するにしても,数学の諸概念や,基本的な公式は知 らないと,何も始まらない. 人間がすべき部分は,現実に与えられた問題を,数学的に定式化して,問 題を解決するための計算式や方程式を作ったりする部分である.そして,数 学を勉強した多くの人が経験したように,ここが数学を使う上でもっとも 難しいところでもある.ただし,ここの部分は数学の専門知識よりも,理 工学・経済学などのそれぞれの専門知識が必要なので,本書では扱えない. そのかわり,実践面でよく登場すると思われる公式に関しては,少し詳しく 紹介した.どういうわけか,実用上有用な公式でも,大学生が多く使う一般 的教科書には紹介されていないものも多数ある.そういう盲点にある部分 は,重点的に紹介したつもりなので,幾分かでもお役に立てば幸いである. 2008年5月 著者


目次

第 0 章 基礎用語と基本概念 0.1 計算に関する記号 0.1.1 自然数・整数・有理数・無理数・実数 0.1.2 複素数 0.1.3 数列と極限 0.1.4 総和Σと総乗Π(有限項の場合) 0.1.5 総和Σと総乗Π(無限項の場合) 0.1.6 実数の切り上げ・切り捨て 0.1.7 階乗と二項係数 0.1.8 順列・組合せ 0.1.9 割り算 0.2 関数 0.2.1 集合の用語 0.2.2 写像 0.2.3 集合の濃度 0.2.4 1 変数関数 0.2.5 1 変数関数に関する基本用語 0.2.6 図形やグラフの平行移動・回転移動 0.2.7 図形の変換 第 1 章 初等関数 1.1 三角関数 1.1.1 弧度法 1.1.2 三角関数の定義 1.1.3 三角関数の基礎的な関係式 1.1.4 三角関数の図形的意味 1.1.5 三角関数のグラフ 1.1.6 三角関数の巾級数表示 1.1.7 加法定理の基本公式 1.1.8 倍角の公式 1.1.9 半角の公式 1.1.10 積和公式 1.1.11 和積公式 1.1.12 3倍角の公式 1.1.13 三角関数の合成 1.1.14 三角関数の有理式表示 1.1.15 n 倍角の公式 1.2 指数関数・対数関数 1.2.1 対数関数 1.2.2 指数数関数 1.2.3 指数関数・対数関数の微積分 1.2.4 オイラーの公式 1.2.5 複素数の対数関数・指数関数 1.2.6 複素関数としての初等関数 1.3 逆三角関数 1.3.1 逆正弦関数 1.3.2 逆余弦関数 1.3.3 逆正接関数 1.3.4 円周率 1.3.5 その他の逆三角関数 1.3.6 双曲線関数 1.4 初等関数の微積分 1.4.1 三角関数の微積分の基本公式 1.4.2 定数係数2 階線形常微分方程式 1.4.3 1 階線形常微分方程式 1.4.4 ロジスティック関数 1.4.5 ゴンペルツ曲線 1.4.6 初等関数で表せない有名な積分 第 2 章 図形と三角法 2.1 三角形の計量 2.1.1 基本計量公式 2.1.2 その他の有名な公式 2.1.3 座標平面上の三角形の面積 2.2 四角形の計量 2.2.1 四角形の面積 2.2.2 円に内接する四角形 2.3 四面体の体積 2.3.1 錐体の体積 2.3.2 6 辺の長さから四面体の体積を計算する方法 2.3.3 座標空間内の四面体の体積 2.4 いろいろな立体図形の計量 2.4.1 正多面体の体積 2.4.2 台形六面体の体積 2.4.4 球の体積と表面積 2.4.5 プリズム体の体積 2.5 球面三角法 2.5.1 球面座標 2.5.2 基本用語 2.5.3 基本公式 2.5.4 球面上の2点間の距離 2.5.5 球面三角形の合同 2.5.6 球面三角形の面積 2.5.7 立体角 2.5.8 その他の諸公式 第 3 章 図形と方程式 3.1 平面上の直線の方程式 3.1.1 2点を通る直線の方程式 3.1.2 ヘッセの標準型 3.1.3 点と直線の距離 3.1.4 線対称移動 3.1.5 直線の線対称移動 3.2 座標平面上の円 3.2.1 円の方程式 3.2.2 3 点を通る円の方程式 3.2.3 方巾 3.2.4 根軸の方程式 3.2.5 根心 3.3 二次曲線 3.3.1 楕円 3.3.2 双曲線 3.3.3 放物線 3.3.4 一般の2次曲線 3.3.5 2次曲線の分類 3.3.6 円錐曲線 3.4 接線 3.4.1 接線の方程式 3.4.2 2 次曲線の接線 3.4.3 2 次曲線の極と極線 3.5 空間内の図形と方程式 3.5.1 空間内の直線の方程式 3.5.2 平面の方程式 3.5.3 球面の方程式 第 4 章行列とベクトル 4.1 行列 4.1.1 配列と行列 4.1.2 行列の演算 4.1.3 転置行列 4.2 行列式 4.2.1 展開公式による行列式の定義 4.2.2 行列式の基本性質 4.2.3 行列式の展開公式 4.2.4 上半三角行列の行列式 4.2.5 積の行列式 4.2.6 逆行列と余因子行列 4.2.7 連立方程式 4.2.8 トレース 4.3 内積 4.3.1 実ベクトルの内積 4.3.2 回転 4.3.3 複素ベクトルの内積 4.3.4 エルミート行列とユニタリー行列 4.3.5 ローレンツ変換 4.3.6 ベクトル積 4.4 ベクトル空間 4.4.1 部分ベクトル空間 4.4.2 次元と基底 4.4.3 行列のランク 4.4.4 正規直交系 4.5 固有値 4.5.1 基本概念 4.5.2 行列の対角化 4.5.3 ケーリー・ハミルトンの公式 4.6 テンソル 4.6.1 基本概念 4.6.2 縮約 4.6.3 添え字の上げ下げ 第 5 章 微分積分 5.1 微分 5.1.1 関数の極限 5.1.2 区間 5.1.3 連続関数 5.1.4 微分 5.1.5 微分の基本公式 5.1.6 基本関数の導関数 5.1.7 テーラー展開 5.1.8 極値問題 5.2 積分 5.2.1 定積分 5.2.2 不定積分 5.2.3 積分の基本公式 5.2.4 基本関数の原始関数 5.3 偏微分 5.3.1 多変数関数 5.3.2 開集合・閉集合 5.3.3 偏導関数 5.3.4 高階偏導関数 5.3.5 合成関数の偏微分法 5.3.6 多変数関数の極値問題 5.3.7 ラグランジュの乗数法 5.3.8 曲率とねじれ率 5.4 重積分 5.4.1 リーマン測度 5.4.2 リーマン測度の性質 5.4.3 一般化された測度 5.4.4 領域の分割とその細分 5.4.5 重積分の定義 5.4.6 重積分の線形性 5.4.7 重積分の計算方法 5.4.8 重積分の変数変換公式 5.4.9 線積分 5.4.10 複素積分 5.4.11 面積分 5.4.12 ベクトル場・スカラー場 5.4.13 平面上のガウスの定理 5.4.14 空間のガウス定理 5.4.15 空間曲面のストークスの定理 5.4.16 多様体上の積分 5.5 複素関数 5.5.1 正則関数 5.5.2 コーシーの積分定理 5.5.3 孤立特異点 5.5.4 ローラン展開 5.5.5 収束半径と特異点 5.5.6 留数 5.5.7 留数定理 5.5.8 一致の原理 5.5.9 解析接続 5.6 いろいろな複素関数 5.6.1 ガンマ関数 5.6.2 楕円関数 5.6.3 テータ関数 5.6.4 ヤコビの楕円関数 第 6 章 数列と級数 6.1 数列 6.1.1 漸化式 6.1.2 an+1 = ran + f(n) という形の漸化式 6.1.3 その他の漸化式 6.1.4 総和公式 6.1.5 ベルヌーイ多項式 6.2 フーリエ級数 6.2.1 有界変動関数 6.2.2 フーリエ級数 6.2.3 フーリエの基本定理 6.2.4 主な関数のフーリエ展開 6.2.5 複素型フーリエ級数 6.2.6 病的関数 6.3 直交関数系 6.3.1 ベッセル関数 6.3.2 ベッセル関数の零点 6.3.3 円柱関数 6.3.4 球ベッセル関数 6.3.5 ルジャンドル多項式 6.3.6 ルジャンドル陪関数 6.3.7 ラゲール多項式 6.3.8 ラゲール陪多項式 6.3.9 エルミート多項式 6.4 級数による偏微分方程式の解法 6.4.1 1次元波動方程式 6.4.2 1次元熱伝導方程式 6.4.3 ラプラシアン 6.4.4 ラプラシアンの極座標表示 6.4.5 2次元波動方程式 6.4.6 3次元波動方程式 6.4.7 ヘルムホルツ方程式 6.4.8 シュレジンガー方程式 6.4.9 超幾何級数 第 7 章 代数 7.1 一変数多項式 7.1.1 用語 7.1.2 2次方程式 7.1.3 3次方程式 7.1.4 4次方程式 7.1.5 5次以上の方程式 7.1.6 終結式 7.1.7 判別式 7.1.8 根と係数の関係 7.2 多変数多項式: 7.2.1 多変数多項式の整理 7.2.2 斉次多項式 7.2.3 2 変数連立高次方程式の解法 7.2.4 媒介変数の消去 7.2.5 代数曲線の次数と媒介変数表示の次数の関係 7.2.6 因数分解 7.2.7 整数係数多項式の因数分解 7.2.8 実数・複素数係数多項式の因数分解 7.3 不等式 7.3.1 有名な不等式 7.3.2 イェンセンの不等式 7.4.3 主な3 変数不等式 第 8 章 離散数学 8.1 整数と合同式 8.1.1 約数・倍数 8.1.2 素因数分解 8.1.3 公約数・公倍数 8.1.4 ユークリッドの互除法 8.1.5 合同式 8.1.6 フェルマーの小定理 8.1.7 合同式における割り算 8.1.8 剰余系Z=nZ 8.1.9 素体F_p 8.1.10 リーマン・ゼータ関数 8.2 数の表記 8.2.1 2進法・p進法 8.2.2 2の補数とp進整数 8.3 論理と集合 8.3.1 命題と論理 8.3.2 「かつ」と「または」 8.3.3 ∀ と∃ 8.3.4 集合の演算 8.3.5 直積集合 8.3.6 合成写像 8.3.7 恒等写像 8.4 グラフ 8.4.1 グラフ 8.4.2 有向グラフ 8.4.3 グラフに関する諸問題 第 9 章確率・統計 9.1 確率 9.1.1 確率論を適用する場合の注意 9.1.2 有限標本空間 9.1.3 反復試行 9.1.4 条件付き確率 9.1.5 マルコフ過程 9.2 統計 9.2.1 平均と分散 9.2.2 相関係数 9.2.3 相関行列 9.2.4 回帰直線 9.3 確率分布 9.3.1 二項分布 9.3.2 正規分布 9.3.3 ラプラスの定理 9.4 推定と検定 9.4.1 正規分布による推定と検定 9.4.2 二項分布による推定と検定 9.4.3 カイ2乗分布 9.4.4 適合度の検定 9.4.5 独立性の検定 9.4.6 分散の推定・検定 9.5 線形計画法 9.5.1 標準的LP問題 9.5.2 無限方向