数学は体系的な学問である.基礎から最先端まで論理的に順を追っ て組み立てられていて,順序正しくゆっくり学んでいけば,自然に 理解できるようになっている反面,途中をとばしていきなり先を学 ぼうとしても,多くの場合,どこかで分からなくなって進めなくな る.バラバラの知識・話題の寄せ集めでは,数学を学ぶことは決し てできない.数学の本,特に教科書のたぐいは,この数学の体系的 な性格を反映していて,がっちりと一歩一歩進むよう書かれている. 一方,現在研究されている数学,あるいは,過去においても,それ ぞれそのときに研究されていた数学は,一本道でできあがってきた わけではない.大学の数学科の図書室に行くと,膨大な数の数学の 本がおいてあるが,書いてあることはどれも異なっている.その膨 大な数学の内容の中から,100年後の教科書に載るようになること はほんの一部である.教科書に載るような,次のステップのための 必須の事柄ではないけれど,十分面白く,意味深い数学の話題は いっぱいあって,それぞれが魅力的な世界を作っている. 数学を勉強するには,必要最低限のことを能率よく勉強するだけで なく,時には,個性に富んだトッピックにもふれて,数学の多様性 を感じるのも大切なのではないだろうか. このシリーズでは,それぞれが独立して読めるまとまった話題で, 高校生の知識でも十分理解できるものについての解説が収められて いる.書いてあるのは数学だから,自分で考えないで,気楽に読め るというわけではないが,これが分からなければ先には一歩も進め ない,というようなものでもない. 読者が一緒に楽しんでいただければ,編集委員である私たちも大変 うれしい. 2008年9月 編 者